巨大な撮影スタジオに作られた3つの子ども部屋で、幼い顔立ちをした3名の女優(18歳以上)は偽のSNSアカウントで12歳のふりをするという任務を与えられた。各々の部屋のPCで、連絡をしてきたすべての年齢の男性とコミュニケーションを取った。当初のプロジェクトと同様、大多数の成人男性はビデオセックスを要求し、自身の性器の写真やポルノのリンクを送信してきた。なかには恐喝する者も。精神科医、性科学者、弁護士や警備員など専門家の万全なバックアップやアフターケアを用意しながら撮影を続けること10日間。児童への性的搾取者が徐々に尻尾を出し始めるのだった…。
現代の子どもたちが直面する危険をありのまま映し出した恐るべきこのリアリティーショーは、SNSと常に接するジェネレーションZ世代やその親たちに恐怖と共に迎えられ、本国チェコでドキュメンタリーとしては異例の大ヒットを記録。児童への性的搾取の実態を描いた映像として、チェコ警察から刑事手続きのための映像が要求された。実際の犯罪の証拠として警察を動かした大問題作がいよいよ日本公開となる。
バーラ・ハルポヴァー
チェコ生まれ。『Thank You Melonik』(2014)で、マグネシア賞・最優秀学生映画賞にノミネート。後にiShorts vol.6短編映画祭とエディンバラ国際映画祭で上映された。次作『Arms Ready』(2016)はPavel Koutecký賞にノミネート、One World FestivalとJi.hlava国際ドキュメンタリー映画祭のコンペティション部門で上映。『A Theory of Equality』(2017)は現代のチェコ共和国における男女平等についての議論を巻き起こし、チェコジャーナルシリーズで上映された。『On the Edge』(2018)では、チェコ共和国の地球平面説に焦点を当てマグネシア賞・学生映画部門の最終候補に選ばれた。『Real(e)state』(2019)では、現在進行中のチェコの住宅危機を描き、One World Festivalでプレミア上映を果たした。最新作『New Oath』では、同性結婚の合法化について描いている。
Q:映画の手法としてなぜ“嘘”(偽アカウント)から作り上げることにしたのでしょうか?
A:私達は子ども部屋の中で起きているこの深刻な事態をどう映像として記録するかという、高度なチャレンジに直面しました。オオカミたちが子どもたちと巧妙にコミュニケーションを取りながら、騙したり操ったりする全てのトリックを事細かに、かつ正確に伝えたいと思いました。今回行った撮影方法には倫理的な脆弱性があったのは事実です。その点からも、このプロジェクトに着手した当初から精神科医、性科学者、弁護士や警察といった専門家たちにも相談しました。同時に、観客にとってもフェアでないといけないと思い、私達が抱いた疑問や、うまくいかなかった状況なども含め、このプロジェクトの過程すべてを包み隠さず見せながら、自分たちの力でこの実験全体を進めることにしました。もしインタビューやルポルタージュのつぎはぎで作ったとしたら、いま子どもたちが経験している“実際のこと”を想像すらできなかったでしょう。
Q:本作に取り組んだことで、このテーマに対するあなたの見方は変わりましたか?
A:見方は変わっていないと思います。わたしは当初から“天使のような子どもたち”と“邪悪な男性たち”という白黒のはっきりした構造では見ていませんでしたから。ただ正直に言うと、一つだけ私を非常に驚かせたことがありました。少なくとも10年間以上前から存在していた現象だとは知ってはいましたが、近年、少年少女たちが自分の裸体の価値に気付き、躊躇いもなくそれを売るようになったということです。ただ仲間外れにされたくない、ただ携帯のアプリが買いたい、というような単純な理由のために。
ヴィート・クルサーク
チェコ生まれ。2006年、FAMUのドキュメンタリー映画学科を卒業。その後、フィリップ・レムンダと一緒に制作会社「Hypermarket Film」を設立。原則として広告を製作せず、ドキュメンタリーを中心とした会社だ。クルサークとレムンダによるドキュメンタリーコメディ『Czech Dream』(2004)は国内外の映画祭で数々の映画賞を受賞し、24ヵ国に及ぶ海外のテレビ局によって放映。またレムンダと監督した『Czech Peace』(2010)はマイケル・ムーア主催のトラバースシティ映画祭でプレミア上映された。映画の批評家と理論家を取り上げた『All for the Good of the World and Nosovice』(2011)ではチェコのアカデミー賞とされるチェコ・ライオンにて最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞。近作に『Matrix AB』(2015)、『The White World According to Dalibor』(2017)など。待機作にレムンダと共同執筆・共同監督の『Once Upon a Time in Poland』(2020)がある。
Q:本作は本国で公開されるまで数か月間、多くの議論がありました。映画の主題自体がスキャンダルの可能性があったからでしょうか?
A:おっしゃる通りかと思います。この映画は公開前からある意味で強い注目を集めていました。ただそれと同時に、児童虐待問題を扱うにあたり衝撃的な、恐ろしい、感情的に脅迫感を起こさせるような方法を使うという落とし穴はうまく回避できたと思っています。ハルポヴァーと私は編集室で多くの議論を重ね、この映画が一線を踏み越えないよう各シーンを微調整しました。それは私たちが映画の中でのユーモアを躊躇わなかった理由でもあります。
Q:「チェコ警察が映像を要求し、刑事手続きを開始した」と映画でもありましたが、具体的に警察にどのような協力をしたのでしょうか?
A:このプロジェクトは多くの余白ある実験から生まれています。どんな行動が撮影されるか、一体どこまで行けるのか、撮影前は分かりませんでした。企画書の段階では、これらの男性を犯罪者として扱うのではなく、何よりもまず彼らが子どもたちを巧みに操ろうとするその手法や技術を明らかにし、社会的な議論へと発展させたいという目的でした。しかし、実際にカメラに映ったのは、恐喝と脅迫でした。数名の男性たちは幼児性愛や獣姦もののポルノ等を送り付けてきました。そこで、これは私たちのプロジェクトだけで済まされる問題ではないと判断しました。映像を確認した警察側は完全なプロでした。本作が性的搾取者に向けての強力な抑止力になるであろうと歓迎してくれました。
監督:バーラ・ハルポヴァー、ヴィート・クルサーク
原案: ヴィート・クルサーク
出演:テレザ・チェジュカー、アネジュカ・ピタルトヴァー、サビナ・ドロウハー
字幕翻訳:小山 美穂
字幕監修:牧野ズザナ
配給:ハーク
配給協力:EACH TIME

【2020年/チェコ/チェコ語/5.1ch/ビスタサイズ/原題:V síti/104分/R-15】